最近、GPU市場は大幅な変動が見られます。特に注目されるのが、大手ベンダーであるASUSがハイエンドグラフィックカードの価格を再び引き上げた点です。フラッグシップモデルのRTX 5090 Astral OCとRadeon RX 9070シリーズがその中心となっています。このような価格の上昇は、転売目的の動きによるものではなく、製造業者や小売業者が直面するコストの圧力によるものです。市場データによれば、現在のグラフィックカードの価格は、当初の推奨小売価格（MSRP）の1.5〜2倍に達しており、MSRPの有用性はほぼ失われています。

価格上昇の典型的な例として、ASUSのGeForce RTX 5090 Astral OCが挙げられます。このカードは、NVIDIAのBlackwellアーキテクチャを採用し、21,760のCUDAコアと32GBのGDDR7メモリを搭載しており、非常に高いパフォーマンスを提供します。2月初旬にはASUSのウェブサイトで価格が3,079.99ドルに設定されていましたが、3月中旬には3,359.99ドルにまで上昇し、わずか1か月で280ドルの値上がりとなりました。これは、推奨小売価格1,999ドルを約68％も上回る価格です。一方で、TUF RTX 5090 OCエディションは、MSRPより50%高い2,999ドルで比較的控えめな値上がり（たったの10ドル増）となっています。NVIDIAはRTX 50シリーズの出荷台数が前世代の2倍に達したとしていますが、供給面での制約が価格高騰を続ける要因となっています。

また、Radeon RX 9070シリーズも同様に値上がりの例外ではありません。ASUS プライムRadeon RX 9070 XT OCはそのエントリーモデルとして719ドル、TUF RX 9070 XT OCは799ドルです。これに対し、RX 9070 XTの基本MSRPはわずか599ドルで、それぞれ約20％、33％の価格上昇を示しています。また、エントリーレベルのRadeon RX 9070でも、現行では659ドルで、MSRPの549ドルを約110ドル上回ります。このように、AMDのミッドレンジ製品にも価格圧力が見られます。

GPU価格が上昇する背景には、コスト構造の変化があります。業界関係者は、GPUチップとビデオメモリの製造コストが全体の費用の大部分を占めており、冷却ソリューションやパッケージングから得られる利益率が縮小していると指摘しています。このトレンドを受け、主要なサプライヤーは価格の再調整を余儀なくされることが多くなっています。例えば、ASUSのRTX 5090 Astral OCは今年1月の発売当初に3,409ドルを記録した後、多少の値下がりがありましたが、最新の指標では再び価格上昇の傾向が続いています。

RTX 5090 Astral OCは、クワッドファン冷却システム、最大2,900MHzのコア周波数、1.8TB/秒に達するメモリ帯域幅などの特徴を持ちますが、同時に消費電力は600Wへ増加しており、RTX 4090の450Wを大きく超えています。

現在の市場動向から見ると、2025年のGPU価格競争はまだ終わっていないと言えます。レイトレーシング効果やAIアクセラレーションの性能向上などによるNVIDIAやAMDの新製品の技術進歩にもかかわらず、高価格は多くのテクノロジー愛好家を引き止めています。いくつかの統計では、RTX 5090が特定のセカンダリ市場で5,000ドル以上に達することが示唆されており、RX 9070 XTの予約価格が一部のヨーロッパの小売業者で900ドル近くに達しています。需要と供給のバランスが崩れ、生産コストが上昇する中で、消費者は最新のテクノロジーに対して高額なプレミアムを支払わなければならない状況です。

多くのテクノロジー愛好家にとって、現在のGPU市場はジレンマを引き起こしています。次世代グラフィックスカードの性能向上は魅力的ですが、価格の高騰によりアップグレードが難しい状況です。ASUSの最近の値上げは、より広範な市場のダイナミクスの一端に過ぎません。サプライチェーンの調整や市場競争が激化する中、GPU価格が今後安定するかどうかは不透明です。